【HOW TO】ヘッドパーツのガタつきの原因と調整方法【図解】 カテゴリ: ロードバイク クロスバイク パーツ・アクセサリー タグ: #ヘッドパーツ #ヘッドパーツ調整 #新宿 投稿日:2022-04-26 ワイズロード新宿本館スタッフのmattsです。 主にMTBの組み立てやカスタム、修理等のテック作業を担当しています。 今回はヘッドパーツの起因のガタをメインに調整方法についてお話しします。 ここ数年、当社主催のワイズカップやGSRカップなどイベントのテックブースでバイクの修理・調整を行うのですが関連トラブルが多く見られます。加えて問題なのが ガタつきが小さい場合です。 気づきにくい割に影響が大きく、パーツやフレームを痛めたりハンドリングなどが不安定になったりと自転車にもご自身にも負担がかかります。 ヘッドパーツの調整やガタつきの原因、対策まで写真や図を使ってとことん解説します。 目次 ヘッドパーツの成り立ち(図解付き) ガタとは ガタついてると何が問題? ガタの原因と対策 ①固定手順のミス ②ステムとコラムの段差が適切でない ③パーツ取り付け向きのミス ④そのほかの原因 参考動画 もっと高精度な仕上がりにしたいなら まとめ ヘッドパーツの成り立ち(図解付き) 本題の前にヘッドパーツの成り立ちについてご説明します。 現行のスポーツサイクルのほとんどが【AHEAD】と呼ばれる規格を採用しています。車体にベアリングを組み付ける方法などにより種類がいくつか分かれますが、基本的な構造はすべて同じです。 真ん中のステアリングコラムはヘッドパーツ〜ステムまで貫通しており、ヘッドパーツはフレームとステアリングコラムの間に入ります。 (簡略した断面図) ガタとは ベアリング部分に十分な加圧がされておらず、部品が浮いてしまっている状態を指します。 僅かな隙間でも各部品が密着していないとガタに繋がります。さらにフォーク先端までの間にガタが増幅されるため、フロントブレーキをかけて車輪を固定した状態で車体を前後に揺すると、『カクカク』とズレる感覚が伝わってきます。一度確認してみてください。 ガタついてると何が問題? そのままの状態で乗るとヘッドパーツをはじめ各パーツが痛みます。インテグラルタイプ(ヘッドパーツの一種)ではフレームと直接ベアリングが接触するため、長期にわたり乗車し続けるとフレーム本体にも影響が出ます。 また車体の挙動が安定しない為、ハンドリングやブレーキングも不安定になり転倒などの事故につながる可能性もあります。 ガタの原因と対策 ご自身でステム交換やスペーサーの入れ替え、フォーク交換、ベアリングのメンテナンスなどをおこなった際に起きやすいようです。 ちなみにヘッドパーツの調整方法=ステム回りの部品の固定方法。よくあるミスと対策をご紹介します。 ①固定手順のミス ガタが出ている原因として固定手順を間違えていることが多いです。正しく固定し直してみてください。 対策:正しい手順でヘッドパーツを固定する ①キャップボルトを締めこみ、ステムやスペーサーごと押し下げ、ヘッドパーツに充分加圧する 手で上から押し込むだけではなく下のパーツをしっかり下げて締めてください。 ステムやヘッドキャップの部品などの抵抗があるため、加圧不足になりやすいです。 また大抵のメーカーは4N・m前後のトルク指定ですが、実際は使うステムとコラムの組み合わせによって変わります。回転の重さやガタが無くなっているかを目安に作業してください。 ※逆に締めすぎるとベアリングを加圧し過ぎてしまいヘッドの回転が重くなるため要注意です。 ②ステムの固定ボルトを締めこんで固定する。 (キャップボルトを十分に締めこんだあとにステムの固定ボルトを締め込みます) 手順は2つだけですが、しっかり加圧する点に気を付けておこなってください。 上記の方法で組み付けているのにガタが出る場合はほかの要因が考えられます。 ②ステムとコラムの段差が適切でない これは部品の構成などを変えた場合に起こりうる事象です。 「ステムとコラムの段差」とは、ヘッドキャップを外したときに見えるステムとコラムの上面の差のことです。ヘッドキャップを支えている部分で、狭すぎても広すぎてもトラブルの原因になります。 ・ステムとコラムの段差が狭すぎる 段差が狭すぎる状態でヘッドキャップを取り付けると、ヘッドキャップの底面がコラムに当たりボルトをいくら強く締めこんでも浮いてしまいます。ごく僅かな差だとちょうど良く加圧されているような感覚があり、作業時に気づかない事も多いです。「正しく取り付けたはずなのに走行するとガタつく」といった方はこちらが原因かもしれません。 (NG例。コラムとステムの高さがほぼ同じです) (図解) 対策:スペーサーを追加する ヘッドキャップにあわせてステムとコラムの段差を広げるためスペーサーを追加します。 このときヘッドキャップの段差+加圧して下がる分の高さを考慮します。 (ヘッドキャップ裏面。固定したときにズレないよう段差があります) スペーサーは1番薄い物で2mmです。ステムの上下どちらに入れても構いません。 ステムを一旦固定したら確認します。 ステム下のパーツ(スペーサーやヘッドパーツの上側のキャップ部分)を手で回してみてください。ステムとコラムも一緒に回ればOKです。 手で持っている部分しか回らない場合は加圧不足のため再調整してください。 (フォークの固定方法が特殊なCannondaleのLeftyフォークなど一部例外もあります) (ステム下のパーツ部分だけを回します) ・ステムとコラムの段差が広すぎる 段差が広すぎると、ガタつき以前にコラムが変形してしまうことがあります。 対策:ステム固定ボルトにコラムがかかるように調整 ステム固定ボルトの中心線よりコラム上部が下にならないようにします。 スペーサーを抜いて調整してください。 (NG例。ステムの上面に対してコラムがかなり奥に入っています) (図解) ・余談:よくあるステム&ヘッド調整ミス 余談ですが、ステムヘッド調整のよくあるミスとして、コラムに対しステムがかなり下に取り付けられている例が見られます。 段差が広すぎると、ガタつき以前にコラムが変形してしまうことがあります。 (図解) コラム内部が空洞のためステムの圧縮に耐えられず変形します。ステム上部に突出している部分が転倒時などにライダーの身体にぶつかり、怪我をすることもあり非常に危険です。特にカーボンコラムでは割れる恐れもあるため、コラムを適切な長さにカットしましょう。 ③パーツ取り付け向きのミス こちらは車体からフォークを抜いたり、ベアリング部分を外してメンテナンスをした後に起こりやすいです。裏表を逆にしたまま走行すると、実際には球が適切に当たっておらずあっという間に破損します。 特にベアリングの球がむき出しになっているタイプで間違えやすいです。どっち向きでも収まってしまうので要注意。 対策:正しい向きで入れる ベアリングのリテーナーと呼ばれるパーツは裏表で形状が違います。 分解するときに、上下それぞれどちら向きに入っていたかをしっかり覚えておきましょう。 忘れそうなときは写真を取っておくと良いです。 (裏表で形状が異なる。取り付けると左のでこぼこに見える面が向かい合う形になる) (ベアリング(上)のセッティング。上:NG例 下:OK例) (ベアリング(下)のセッティング。上:NG例 下:OK例) また、中級グレード以上の車体でよく採用されているシールドベアリングタイプも同様に裏表がありますが、接触面が斜めになっているため逆向きに入れても不安定だったりしっかり収まらなかったりしてすぐ気づくことができるはずです。 (シールドベアリングタイプ。取り付けると左の面が向かい合う形になる) ④そのほかの原因 そのほかよくある原因は以下です。 ・再度組み付けの際に入っていた部品の順番を間違える ・パーツを入れ忘れる 十分な加圧が出来なかったり、ベアリングが他の部品と接触してしまいガタになったりします。この場合は早い段階で部品の破損に繋がることが多く、ヘッドパーツをまるごと交換する必要もありますのでご注意ください! 参考動画 ワイズロードでは、Youtubeに様々な部品の調整方法などを解説した動画もUPしております。 今回の解説ページと合わせて見ていただけるとかなり分かりやすいと思います。 もっと高精度な仕上がりにしたいなら ヘッドパーツ交換時にあわせてフレームやフォークのフェイシング処理もお勧めします。 これはヘッドパーツの部品の圧入箇所を専用の刃物で削って水平と平行を出す処理です。動きがスムーズになり、さらに耐久性も向上します。高品質なヘッドパーツへの交換の際には是非。 (フレーム・フォークのフェイシング処理後) まとめ ヘッドパーツはハブやBBと同じく車体にかかる力を受け止める「軸受け構造」の1つ。他と比べてグルグル回転する場所ではないのでつい疎かにしてしまいがちですが、走行時には大きな力を受け止めている大事な部分です。定期的なメンテナンスと共に、正しい組付けを行って安全・快適に乗車してください! ということで、自転車の『かなめ』ともいえるヘッドパーツ関連のテック・トピックスをお送りしました!長文となりましたが、ご自身で調整する際に参考にしてみてください。 もちろん自分でやったけど上手く行かないよ~!という方はお店にご相談いただければ対応いたします。お気軽にお持ちくださいね! 執筆者 ワイズロード新宿本館/松永 剛 ※商品情報、スタッフの所属店は投稿時のものとなります。